高校野球と英雄史観とネコ殺し

 私はあまり関心ないのだが、今年の夏の高校野球は盛り上がったようだ。特に優勝戦が延長引き分け再試合となり、いい試合だったようである。また、優勝した高校の投手に人気が出ているようである。
 職場の食堂で見た昼のワイドショーでやっていたのだが、この優勝校の投手の他にも、打席で吠えるムードメーカーの代打選手など、何人かのヒーローが紹介されていた。
 チームに何人かは特にキャラ立ちする選手がいるのは当然で、そういう選手をクローズアップしてみるのも面白い。
 しかし、これはまた一種の“英雄史観”的な見方でもある。
 野球は一人でやるものではなくチームでやるものであるから、チームにはキャラ立ちしてワイドショーなどで紹介されて人気が出るようなキャラもいるし、縁の下の力持ちのように、地味で目立たない選手や、レギュラーになれない選手もいるのである。
 また、優勝したチームの他に、準優勝で負けたチーム、三回戦で負けたチーム、一回も勝てずに甲子園を去ったチームもあるし、そもそも甲子園に登場する都道府県代表のチームの陰には、地方予選で負けた幾千万(?)もの高校がいる。
 確かに“英雄中心史観”で見ると面白いことは否定できない。しかし、高校野球は甲子園で活躍するような選手だけではなく、地方予選で負ける選手や補欠選手など、多くの人で成り立っているのである。
 地方選で消えてしまうようなチームの縁の下の力持ち的な補欠選手にもドラマがあるのではないかという立場もあるのである。
 そこら辺、バランスを取って考えると高校野球はもっと面白く見えるのではないか。
 それを歴史に当てはめて考えることもできる。
  
……と、そもそも体育会系が嫌いで典型的な文化系で高校野球についても全く関心も知識もない私が偉そうに高校野球について語ってしまったのは、以下に述べることの前置きである。
 以前、“功名が辻論争”というのがあり、それに関して司馬遼太郎の“英雄史観”について述べたことがある。
 
■[メモ]「功名が辻」論争と歴史小説の読み方
  http://d.hatena.ne.jp/minshushugisha/20060228
 
 そもそも「功名が辻」を批判してこの論争を始めたのが、坂東眞砂子坂東真砂子)さんという高知出身の作家なのである。
 この坂東さんが再び物議をかもしているというのである。
 
◆まぐろのはらわた “釣り師”坂東眞砂子、全国進出
  http://blog.livedoor.jp/maguro_fukuzo/archives/50351914.html
◆London bridge 坂東眞砂子さんは「いごっそう」
  http://belena.blog70.fc2.com/blog-entry-157.html
◆土佐高知の雑記帳 「猫・犬殺し」論争(?)考
  http://jcphata.blog26.fc2.com/blog-entry-421.html
 
 土佐高知さんが書いているが、高知では昔からそんな習慣があったそうである。
 そういった文化的背景も考慮して考える必要はあると思いますが。
 それにしても、このような行為は人知れず隠れて行うことであって、堂々と発表することではないと思います。
 何でも大っぴらに公表して行えば良いというものではなく、物事には大っぴらに言ってよいことと悪いことがあるということです。
 本音と建て前ともいいます。
 高知で昔から行われてきたといっても、大っぴらに行っていたわけではないと思います。
  
 最近、匿名掲示板の影響か、昔なら“良識”という建て前で大っぴらに言われなかった本音むき出しの暴言が堂々と発言されるようになってきました。
 例えば、韓国の人が虫が好かないと思っても、昔の良識ある教養人ならば、それをおくびにも出さずに表面上は友好的にふるまっていたでしょう。
 ところが今は堂々と本音むき出しで暴言を吐いています。嘆かわしいことです。(この風潮はまだネット上だけで、現実社会ではそこまで行っていないと思いたい。)
 匿名掲示板の悪影響によってネットから“良識ある姿勢”が減り、“本音むき出しの暴言”が増えています。現実社会にもその風潮が及べば、恐ろしいことになります。
 kechackさんもそのことを指摘されています。
はてなブックマーク > Munchener Brucke - 良識への挑戦−坂東眞砂子氏の子猫殺し発言にみる−
URL:http://d.hatena.ne.jp/kechack/20060825/p1

私はこのような発言が出る空気についてふと思うことがある。特異な作家の特異な意見というより、明らかにこのような意見が出やすい時代の空気があると思う。なんと言うか「旧来の良識への挑戦」とか「本音をずばり言うこと」を賛美する空気である。これは最近の「若者の右傾化」として捉えられている現象とも地続きで、あれもマスコミや従来左寄りと言われていた*1知識人が構築した良識への挑戦でもある。(*1:最近は良識的な保守まで批判対象になっている)

 坂東さんについては前回、史観論争に関しては賛成させて頂きました。
 しかし今回に限っては、少々良識を欠いた行為ではなかったかと思います。
  
 人間を自殺に追い込むような政治家の方が何十倍も何百倍も悪質ですが……。
bogusnews
痛いニュース(/Θ`):政治家の小泉純一郎が日常的に日本人を殺していると語る
  http://bogusnews.seesaa.net/article/22753113.html
 
 さらに言わせてもらって、掲示板やブログに押しかける“炎上”という行為を考えてみます。
 kechackさんは続けています。

 坂東氏の子猫殺しはこんな時代の空気でも流石に支持は広がらなかった。そこにはもう一つ微妙な空気も見逃せない。酒鬼薔薇事件以降、動物虐待により惨殺するような行為と殺人の連続性が認識されるようになり、動物虐待を行う人間を殺人予備軍と認識する意識が広がっていることだ。

 確かに子猫を殺す行為を支持する人はそうはいないと思います。
 それとは別に、“炎上”行為への加担というのもあるでしょう。
 多数派によって“悪い方”と決め付けられたブログや掲示板に押しかけて炎上させる、“祭り”という行為。
 今回、坂東さんの掲示板が“祭り”で荒らされることになりました。
 
 ネコを殺すことを公言することが良識を欠く行為ならば、掲示板やブログに押しかけて炎上させる行為も良識を欠く行為でしょう。
“炎上”“祭り”は某巨大匿名掲示板が生み出した良識の無い行為の代表例。
“炎上”は破壊以外の何物も生み出しません。
 説得には荒らし行為ではなく、対話が必要です。
 この某巨大匿名掲示板が発生させる良識外れ・マナー違反のネットイナゴネットフナ虫ハエ男達がネット環境を悪化させているのです。
 
 というわけで今回の事件は、本音むき出し暴論が生んだ殺伐とした事件ではないでしょうか。
 これによって生(性)と死(ペットや野生動物や人間を含め)について考える問題提起になれば、無駄ではなかったとも言えそうですが。
 しかしネット時代とはいえ、本音むき出しの姿勢を抑えて良識を持った姿勢を取れば、ネットはもっと住みやすくなると思うのだが。
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