ニアレトロ物語 春男?!
しんぶん赤旗日曜版に2008年1月から連載されているマンガが
『ニアレトロ物語 しずく』(おだ れいこ)。
舞台は昭和30年代の東北地方。主人公のしずくちゃんは小学校3年生です。出会いや事件を通じて芽生える心持ちや新たな発見。懐かしい情景の町での元気な日常生活を描きます。作者のおだれいこさんは、「テレビやゲームのない時代、どんなふうに遊んでいたか、今の子どもたちに見てほしい」と語っています。
『三丁目の夕日』の次は『しずく』だ!ぜひ映画化を!日本アカデミー賞を目指せ!
『三丁目の夕日』は昭和30年代の東京の下町が舞台ですが、『しずく』は同じ頃の東北地方が舞台のようです。
ところ変われば物語がどう変わるか。
今のところ、
1月 ホイド
2月 アンゴラウサギ
3、4月 給食
5月 ぬりえ
と、1〜2か月単位で物語が進んでいます。
身近な日常生活を1回読みきりでほのぼのと描いた『ドボン&ウズ・メメス』と比べて、読みきりでない分ちょっととっつきにくい感じです。
しかも『三丁目の夕日』のようにほのぼのとハッピーエンドで終わるのではなく、毎回の終わり方が中途半端でアンチハッピーエンド気味であるし、エピソードごとの終わりも一応ハッピーエンドなのですが、手放しで喜べるというより、何か3割がた不安にさせるような漠然とした不安があるような終わり方です。
娯楽作品というより、文学作品寄りのマンガでしょうか。
まあ気にはなる作品です。
作者のおだ れいこさんは、検索すると同姓同名の方や漢字が違う方などが色々と出てきます。
- 作者: おだれいこ
- 出版社/メーカー: 学漫
- 発売日: 1994/06
- メディア: 単行本
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(第15回黒潮マンガ大賞 審査経過)
こじきを題材にした埼玉県狭山市、おだれいこさん(49)の「ホイド」は「よくまとまっている」(矢野氏)、「むしろこれが面白い」(やなせ氏)と、評価が高かった。
http://www.kochinews.co.jp/manga/siosin03.htm
第17回 審査経過
昭和30年代の子どもの遊びを描いた埼玉県狭山市、小田令子さんの「ニアレトロ物語 しずく」も一昨年に続く入選が決まった。
http://www.kochinews.co.jp/manga/siosin05.htm
さて、5月のテーマは「ぬりえ」。
冒頭、「きいちのぬりえ」が出てきます。昭和30年代にはやったということですから、時代的には合っています。
主人公のしずくちゃんは元気で活発な小学3年生の女の子。特に問題があるというわけではありません。
むしろこのマンガ、しずくちゃんのクラスメートに色々と物語のある子が出てきて、主人公というより脇役が重要なストーリーとなっています。
今月の影の主人公ともいえる人物は、春男君です。
しずくちゃんと美紀ちゃんが遊んでいると髪に洗濯ばさみの飾りをつけて
「お姫様ごっこすっぺ」
とやってきます。
「春男は女の子の遊びが好きで
シスターボーイと呼ばれていた」
幼稚園や小学低学年の頃ならば男女仲良く遊ぶこともあるでしょうが、小学3年の頃といえば、男女別々となることが多い。しかも高度成長期前の東北地方です。戦前の「男女7歳にして席を同じくせず」の気風も残っているのではないでしょうか。
そのような時代・土地柄で女の子遊びをする春男君とは、一体どんな性格形成をしているのでしょうか。
春男君の家でぬり絵を塗ることになった三人。
しずくちゃんは早くてきれいに塗りますが、春男君は塗るのが下手のようです。
「アンゴラウサギ」の回ではしずくちゃんが苦手なウサギのエサの草取りを春男君は手早くやっていたので、人には向き不向きがあるということでしょう。
春男君がぬり絵を見せるのを嫌がったため取り合いとなり、春男のぬり絵が破れ、泣いてしまいます。
ちょっとめめしい気がします。
そこに春男のお母さん、登場。
「だれだあ 春男 泣かしたのは」
頭が痛くて会社を休んでいたようです。
しかし昭和30年代、会社に勤めている女の人(特に母親)は多くなかったのではないでしょうか。
春男君の家庭事情に複雑なものを感じさせます。
そして会社を休んで家で寝ている時も、息子が女の子に泣かされてるというのも気の毒です。
春男のお母さん、しずくちゃんを見て
(また春男になにかしたんだべ)
と疑い、
「春男をいじめるなら帰ってもらうから…」
二人が帰ろうとすると春男は慌てて
「わっ!ぬりえやっぺ
母ちゃんは来るなっ」
思わぬことを言われたお母さんは呆然とします。
この母子の感情の行き違い、気になります。文学作品です。
春男はお詫びのしるしか、持っているぬり絵をしずくちゃんに塗らしてくれますが、後に現れたお母さんが
「春男からぬりえとりあげて全部ぬっちまってはあ」
思わぬ事態に春男もしずく達も何も言えず、しずく達は帰っていきます。
さっきはお母さんに抵抗する元気もあった春男君ですが、今回はその元気もなかったのでしょう。
私も似たような性格の子どもだったので、分かるような気がします。
しかしこの状況、全ての人に対して少しばかり不幸な気がします。
誰も悪くなくて一生懸命生きている人たちばかりなのに、少しばかりの誤解のために全員が少しばかり不幸になってしまうのです。
これは身近な日常生活にもいえることであるし、大きくは国や民族どうしの関係でもいえることではないでしょうか。
しずくちゃんが塗ったぬり絵が懸賞に当たり、映画の招待券をもらいます。
兄と二人で映画に行った帰り、謝るために待っていた春男君と会います。
春男は何も言えず、しずくは
「もういいがらはー」
謝るために待っていたという実行力と誠意は認めます。しかし次に言葉が出てこないというのは苦しい。
そういえば春男君、「ホイド」の回ではホイドを落とすために掘った落とし穴に自分で落ちていました。
春男君の前途が気になります。春男君の今後はどうなるのでしょうか。
何だかんだ言っても幼い頃の自分を思わせる春男君を応援しています。
(追記)
熊本県西原村村議・田島敬一さんのブログでご紹介頂きました。ありがとうございます。
西原村議・田島敬一(日本共産党)とロマンを語ろう・議会報告
「ニアレトロ物語 しずく&春男 しんぶん赤旗日曜版のこんな記事!」
http://orange.ap.teacup.com/tajima/3144.html
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