『桃色ゲリラ』連載書評(2)

minshushugisha2006-05-04

 書評なんて立派なもんじゃありません。“読書感想文”です。タイトルにするには“書評”とした方が座りがいいので。
  過去ログはこちらです。
 

桃色ゲリラ―PEACE&ARTの革命

桃色ゲリラ―PEACE&ARTの革命

  
第2章 生と死そしてアートへの彷徨

 この章は、増山麗奈の人生の回想の続き。時代的には第1章の後から大学卒業くらいまでを描いている。
 色々な人との交際や自殺未遂など、事実は小説よりも奇なりとでもいうべき、波乱に満ちた人生である。
 よく、主人公のぐちゃぐちゃ・どろどろとした人生や人間関係を描くような小説があります。太宰治の『人間失格』のようなタイプに分類されるような小説です。
 まさにこの章は、そういった小説を思わせる展開です。
 大きく分けて、3人の男性との交際が中心となっています。
 日本中を旅している、霊が見えるという修行僧のT。長年サプリメントを飲み続けたために化学物質の匂いがする映像プロデューサーのS。暴力的で巨大な男・R。どれも皆キャラが立っています。このような濃い連中と短期間に深く付き合ったというのは、密度の濃い人生経験でしょう。素材の料理の仕方によっては小説化やドラマ化できそうな内容となっており、夢中で引き込まれるように読まされました。
 そして結局、Rの暴力のために救急入院し、退院して包帯を巻いたまま実家に帰り、その1週間後に父親が脳梗塞で倒れる。増山は家族からお前の暴力沙汰が原因だと責められる。
  
「私は、初めて後悔した。父親殺しの罪は背中に重くのしかかった。龍が私に振るった暴力は、巡り巡って私の父を襲った。そして母や家族をひどく傷つけた。暴力は、連鎖作用によってどこまでも続いていく。暴力の連鎖を断ち切らなくては。暴力は誰をも幸せにしない。ではどうやって私達は、その連鎖を断ち切ればいいのだろうか?それは哲学的な問いとなって、その後も私を突き動かす原点となっている。」
  
 増山が受けた暴力が父親を襲ったということだが、増山に暴力を振るった男もまた、幼い頃から差別や迫害を受けていたという。まさに、暴力は連鎖する。
 増山の父親は、こつこつとリハビリを続け、インターネットを通じた友人達には病気を隠してメールに返信を続ける。
  
「暴力の連鎖を断ち切るというのは、このような精神力と優しさとプライドを持った人間関係から始まるのではないかと思う。誰しも苦しいときや悲しいとき、嫉妬や憎しみ、呪いのような負の感情を持っている。それをそのままの形で人やモノにぶつけるのではなく、心の中で水を浄化させるように、一度租借して外に出す。そんな個々の精神力が必要なのではないだろうか。自分の苦しさではなく、相手を思いやる気持ちで言葉を発していくこと。私がずっと出来なかったことだけれど、本当に強い人はそんなことが出来る人だ。」
 
 そして入院当初は医者から社会復帰はほぼ不可能と言われていた父親は驚異的な回復を見せ、増山の姉の結婚式には足を引きずりながらも花嫁と腕を組んでタキシード姿でバージンロードを歩くまでになっていたのである。
 
 その後増山麗奈は似顔絵屋となってきっかけをつかみ、個展を開き、卒業制作で大学ともめながらもついに芸大を卒業するのである。
(続く)
 
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